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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第18章 拾い者と落し者 其の二




あの後芥川はマフィアの拠点へ戻り報告を上げた。
……無論女の事も。
首領が出した結論はこうだった。


“君の部下にしよう。だがその前に目が覚めたら連れてきてくれ”


何故素性も分からない者を部下にするのか首を捻ったが此処はポートマフィア、そんな事はザラに或る。
自分とて同じだと全てを受け入れた所で女を寝かせた医務室へ辿り着いた。


芥「検査結果は如何に?」

樋「はっ!何処も異常は無く健康体だそうです。」

芥「そうか。」


念の為女の側に置いておいた樋口から先程まで行なっていた検査結果を聞く。
身体に傷一つ無いのに何故此れほど寝ているのか。
少し苛立ちを覚えた芥川は信じられない行動に出た。


芥「………。」

樋「せっ、先輩ッ!!?」

芥「………。」


何と寝ている女の鼻を摘んだのだ。
其れは口を閉じて寝ていれば勿論苦しい訳で、


『………んっ、ぷはっ!………へ?』


………彼女は目を覚ました。


『え?誰?何処?』

芥「先ずは貴様から名乗るべきであろう。」

『あっ、ごめんなさい。私は宮野愛理。』

樋「私は樋口一葉です。」

芥「僕は芥川龍之介だ。今から首領の元へ行く。来い。」


有無を云わさない態度でそう告げれば医務室を後にする。
女も慌ててついて行こうとするが急にハタと立ち止まり後ろを振り返った。


『樋口さん、看病して下さってありがとうございます。』


にっこりと笑いそう告げれば今度こそと医務室を出て行った。
残された樋口は彼女の礼儀正しさと可愛さにただただ悶えていた。














—首領室にて。


森「却説、お目覚めはいかがかな?」

『真逆ポートマフィアに拾われるとは思いもしませんでしたよ。………選りに選って此の方に。』


まるで此方の事を知っている様な素振りに少し身を固くする芥川。
だが何をする訳でもなく彼はそのままジッと二人の会話を見守る事しか出来なかった。


森「私としては願ったり叶ったりだよ。其れで?何があったか聞かせてはくれないかね?」


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