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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第18章 拾い者と落し者 其の二




樋「先輩!此方は終わりました!」

芥「嗚呼。」

樋「……?これは死んでいるのですか?それにしては綺麗な……。」

芥「否。寝ているのであろう。」

樋「えっ!?ちょっ、先輩!?」


ポートマフィアに属する芥川龍之介の部下、樋口一葉が焦るのも無理はない。
鼠一匹残らず殺せと命を受けたまさにその中で女性を担ぎ持ち帰ろうとしているのだから。
羨ましい…。と呟く樋口はさて置き、担がれている彼女は二十代前半だろう。
朱色の髪は背中まで伸びていて其れを横で束ねている。


樋「あの、殺さなくて良いのですか?」


私もあんな風に担がれたい!!と思わず口から零れ出そうなのを抑え必死に任務中だと自分に云い聞かせた彼女はまず其れを思った。


芥「貴様の目は何処に付いている。此の“異常な戦闘”の最中でたった一人無傷で寝ているのだ、此奴が何か鍵を握っていると思うのが必然であろう。」

樋「云われてみれば……」


樋口は芥川の後を追いかけ乍ら先程彼が云った“異常な戦闘”について思い出す。


樋口らが任務を開始しようとした時敵はもう既に半数以上死んでいた。
上司で或る芥川に此れを報告し指示を仰いだ結果、皆殺してしまえば訳はない。と云われ遂行していたが如何も様子が可笑しい。


お互いがお互いを殺しているのだ。
殴り合う者も居れば射殺する者も居る、絞殺する者も居る。
みな目に光が宿っておらず兎に角不気味な光景だった。
それでも任務を続行する事数十分後、辺りに立っている人は居なくなり彼の元へ向かったところで冒頭に至る。


普通に考えれば彼女が何か鍵を握っている筈だ。
それも精神系の異能力を持っている可能性が高い。
そう見込んだ芥川は拠点へ連れ帰る事にしたのだ。


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