第15章 固縛
太「失礼するよ。」
『治……。来てくれて嬉しいけど叩敲ぐらいしよう?』
太「したよ?医務室前で。」
『うん、此処医務室の中の個室なの。だから医務室前と個室の前とで二回叩敲しなきゃ駄目だよね?』
太「あまり話すと身体に触るから大人しくしてるんだよ。」
『最早突っ込む気力も無い。其れで?首領は何て?』
太「ゆっくり休んでくれ、だそうだよ。」
『………。』
太「安心しなよ。寧ろ今までこんを詰めすぎたからって事じゃないかな?」
『そっか……。其れなら良かった。』
太「愛理を切り捨てる心算なんて毛頭無いよ。首領も私も。じゃあ私は行くよ。何か或れば携帯に掛けてくれ給え。」
彼は何処から持って来たのか私の仕事用とプライベエト用の携帯を二台枕元に置くと出て行ってしまった。
ゆっくり休め、とは云われた物の今迄ずっと働き続けて来たのだから退屈で仕方がない。
まぁ処分されなかっただけ良しとしよう。
バタバタバタ、ドンッ!
『えっ、何!?何の音?』
芥「愛理さんっ!!」
『嗚呼、芥川君か!駄目だよー、此処病室なんだから静かにしないと。」
芥「気が付いたと聞き………すみません。げほっ」
額に汗をかく彼を見て急いで来てくれたのだと嬉しく思う。
『ふふっ、有難う。丁度今暇してたの。ねぇ、あの後如何なったの?』
「僕がもう片方の異能持ちにトドメを刺し愛理さんの方に向かうと既に意識が有りませんでした。すぐに機材を壊しマフィアに戻って来ました。」
『………残った下っ端は?』
「戦意も喪失しているかの様に見えたが故。其れより愛理さんを優先すべきかと。」
『其の時戦意を喪失していてもまたふと蘇るかも知れない。其れに昔年の恨み辛みは自身の力を倍増させるのよ?どんなに弱くても人一人残さずきちんと潰しておくべき。』
「………勝手な行動を取り、すみません。」
『でもね、私個人からすれば本当に助かった。有難う。芥川君が血相を変えて運んで来てくれたって聞いた時凄く嬉しかった。』
私が怒っていると思っていたのだろう。
シュンとしていた彼は一瞬顔を上げ、けほけほと咳をしながら目線を横にずらした。