第15章 固縛
私は先程の訓練室に戻って来ていた。
理由は勿論、
『あっ、居た居たー。』
芥「愛理さん。」
『今日は軽めにって云ったのに!』
治との鍛錬で傷だらけになった彼の手当てをする為だ。
其れにしても此れじゃあ何時もと左程変わらないじゃん!
芥川君も良く耐えてるなぁ…。
『ねぇ。逃げ出したりしないの?』
芥「逃げ出す?何故…?」
『だって他の人より断然キツい鍛錬してるんだよ?其れなのに飴一つさえ貰うどころか鞭打たれるばっかり。普通は嫌になって逃げ出すよ。』
芥「僕には行く処が無い故。其れに太宰さんには感謝しています。」
『え?』
芥「出来損ないの僕を鍛えてくれている。彼の人の為にももっと、もっと強くならねば。」
『そっか……。でもね、完璧になる必要なんて無いの。足りない処は補えば良いんだから。芥川君にも相棒や頼りになる部下とか支えてくれる人が必要だね。』
芥「そんな者は要らぬ。」
『居るの!!人はね、自分の居る場所を意味を必要としていく生き物なの。そう云う意味でも……ね?』
芥「其れならば…「愛理ー?首領が呼んで居たよ。」」
『ん?治?有難うー!すぐ行く!………よしっ、此れで手当ては終わり!じゃあ明日の任務宜しくね!またね!』
芥「はい。」
丁寧に施された治療の痕をぼんやりと眺める芥川だったが、彼は扉にもたれ掛かった太宰が己の事を見ている等と知る余地も無かった。