第15章 固縛
芥「……分かりました。」
承知はしたものの芥川君は微動だにしなかった。
恐らく見た事の無い私の異能力を警戒しての事だろう。
でも、
『それじゃあ相手の出方を待ってる間に死んじゃうよ!!』
彼目掛けて苦無を投げれば当然羅生門で弾かれる。
其の隙に間合いを詰めた私は異能力を使う。
芥「!?……消えた、だと。」
『私の異能力は気配を消す事。自身は勿論、人や物まで。まっ、敵はこんな優しく教えてはくれないけど。』
芥「………。羅生門!」
漸く私が本気だと云う事が伝わったらしい。
眉間に皺を寄せた後、外套から伸びた黒い物質が身体を覆っている。
しかし所々隙間が開いて網目状になっている為とても防御とは云えない。
太「其れで防御の心算かい?」
『うん、不十分だよね。』
懐から取り出したナイフで黒い物質を素早く切り落とすと彼の目と鼻の先に立ち異能力を解除する、
ぷにっ
芥「………あの、愛理さん。」
『ん?なぁに?』
芥「何故此の様な事に。」
『芥川君に隙が有り過ぎるからでしょ?』
芥「しっ、然し…!」
太「愛理、離れて。」
『治まで…。唯ほっぺ突っついただけじゃん。』
太「きちんと指導しておくれよ。」
治は私にやれやれと溜息交じりにそう云うと次は鋭い目付きで芥川君の事を見て刺々しい声を出した。
太「あんな様子では使い物にならない。冷静に物事を見ろと何度云わせる心算だ。一時の感情に流される者ほど弱い者は居ない。分かったら続きだ。」
芥「はい。」
『じゃあ私はそろそろ戻るね?明日の事で色々と確認しなくちゃいけない事或るから。治、今日は程々にしてよ!』
太「嗚呼。」
治がきちんと返事をした事を確認すると武器庫や明日同行する班の所へ赴き準備を進めた。
『後は此れでお終い。』