第15章 固縛
自室に戻った私は三時間程パソコンとにらめっこしていた。
内容は明後日の行う潜入任務の作戦立案だ。
本来ならもっと早めに立案するべきだけど状況が変わってしまうと変更しなくてはいけない為ギリギリ迄様子を見たいと云う私の我儘を首領は聞いてくれている。
何でも治と並ぶ頭脳だから期待してくれているらしいが勿論私は彼の方が圧倒的に上だと思う。
其れはさて置き、今回は芥川君との初任務。
彼の停止装置(ストッパー)として白羽の矢が立ったのだ。
……否、私の云う事も聞いてくれないよ?
コンコン
太「愛理、居るかい?」
『どうぞ。先刻会ったばかりじゃない。如何したの?』
太「普段話す機会なんて無いからね。明日の彼の訓練参加するかい?作戦立案の為に実力を見ておきたいのではないかと思って。」
『丁度明日行こうと思ってたところ。参加迄させて貰えるの?喜んで。』
太「私も腕がなるよ。」
『あくまでも鍛錬だからね?次の日に任務が或る事を忘れないで。』
太「勿論だとも。」
—次の日。
芥「愛理さんが何故?」
『明日の任務で芥川君の実力を認識しておく必要があって。』
芥「……。」
太「そう云う事だ、本気で来給え。」
其の言葉を合図に彼は攻撃を開始する。
外套から出る黒い物体が治の身体に突き刺さろうとするがすんでのところでボロボロと崩れ去ってしまった。
あらゆる異能力を無効化してしまう人間失格は今回も例外無かったようだ。
太「攻撃の時に隙が有り過ぎると何度も云っているだろうっ!」
芥「っ!!」
太宰君の云う通り隙がある脇腹に向けて私は苦無を投げる。
無論本気で殺す気なんて無いので掠めた程度だ。
何度も其れを繰り返す事一時間が経過した時、治が口を開く。
太「次は彼女を対象(ターゲット)にしろ。」
芥「否、然し……」
『大丈夫、芥川君に殺される程身体は鈍っていないわ。其れに……自分の心配をした方が良いんじゃない?』
彼に目掛けて投げた苦無は狙い通り首すれすれの所を通り抜け壁に刺さる。