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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第15章 固縛




『うわー、今日も派手にやったねぇ。』

「僕が未熟な故すみません。」

『今はそうかもね。でも芥川君、貴方は強くなる。』

「僕でも……?」

『勿論。否、芥川君だからこそ強くなれるんじゃないかな?』

「……。」


身体中傷と痣だらけの芥川君を手当てするのは私の日課だ。
とは云え医者でも無い私は大きな怪我は治せないし、気休め程度で或る。
其れに手当てを命じられた訳でも無い。
なんとなく目が離せないと云うか放って置けないと云うか…。


『其れにしても治も手加減しないね…。此のままじゃ芥川君の身体が持たないよ。』

「其の程度で死ぬならば僕は弱者です。」

『うーん。一番厳しいのは貴方かもね。』


腕の擦り傷を最後に手当てを終えた事を彼に告げると礼をし、何処かへ行ってしまった。


『あれは鍛錬かなぁ。』


彼に心休まる時は来るのだろうか。
一日の大半を鍛錬に使い身も心もボロボロに違いない。
其れでも自ら進んで行うのだから強く止める事は出来ないのだ。


『理不尽。』

「何がだい?」

『!?………嗚呼、治か。芥川君みたいな子が報われなくて何も考えずにのうのうと生きてる人が報われている世の中が。』

「世の中は常にそう云う物だよ。」

『……そうだね。ところで一寸厳し過ぎるんじゃない?』

「あれくらいで根を上げる様では到底使い物にならない。」

『どれぐらい先を見越してるのかは分からないけど死んだら元も子も無いんだからね?』

「其れ迄だったと云う事だよ。」


先程の彼と同じ事を云う治にじゃあね、と手を振った私は理不尽さを拭えないまま自室へと戻った。


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