第14章 ビー玉
「マフィアに残るにしても探偵社に来るにしても未だ未だ此れからだろう?」
『だから探偵社には…「如何して?」』
『如何してって云われても…。』
「良い処だよ。君なら屹度受け入れて貰える。私が保証しよう。」
『良い処なのは今日見て何となく分かりました。でも私はマフィアを抜ける心算は或りません。』
太宰さんはそうか、とだけ呟くとお猪口を傾けた。
そんなに私を探偵社に連れて来たい理由って何だろう。
異能力目当てって考えるのが妥当だけど先刻違うって云ってたし…。
「ただ単に君にマフィアが似合わないと思っただけだよ。」
『え?何で?』
「あれ?違った?君ならそう考えるかと思っていたんだけど。」
『いえ、合ってます。でも私ほどマフィアにぴったりな人間は居ないと思いますよ。生い立ちにしろ異能力にしろ。』
「でも今は違う。綺麗に笑って綺麗に生きているじゃあないか。」
『綺麗?人を殺しているのに?』
此の人は何を云っているんだろうか。
仕事とは云え人を殺している人間を綺麗だなんて。
私は………、私が綺麗な時なんて今迄で一度も無い。
嗚呼、やだなぁ。太宰さんと話してると調子狂う。
「……私だって君と同じだよ。けどね、人は変われるんだ。今はそうだとしても明日は違うかも知れない。そんな君を側で見届けたい。」
『如何云う心算ですか?』
「私なりのプロポーズ、なんだけど。」
『そう云うのは普通恋人になってからするものですよ。』
「じゃあ恋人になろう。」
『其れもお断りします。』
「えぇーっ。あ!!真逆中也と付き合っているだなんて云わないよね!?」
『違います。』
その後も次々と私に質問する暇さえ与えずペラペラと喋る太宰さん。
此れ言葉のキャッチボールじゃなくてドッジボールだよ。
『兎に角!!私は探偵社に行く心算は或りません。なので勧誘は辞めて下さい。後此れ電話番号です。何か要件が或れば此方に。』
「おや?プライベエトの電話番号をくれるのかい?」
『貴方が私を呼び出す時に中也に掛ければいいんだね?なんて云うから仕方なくです!!』