第14章 ビー玉
『お待たせしました!』
「私も先刻来たところだよ。」
マフィアの建物から出た私はとあるBarで人と会う約束をしていた。
『そんなに私に興味が或りますか?———太宰さん。』
探偵社を去る時、彼は私を引き止めて耳元で今日此の場所で、と指定したのだ。
何が目的かは分からないが余りにも真剣な表情だった為行かざるを得なかった。
「興味深いよ。」
『私の異能力ですか?』
「ううん、君の異能力については知らないよ。」
何だ、異能力目当てじゃなかったのか…。
良かった。
もうあんな思いは沢山だもん。
「強いて云うならば君が其のセンスの悪いチョーカーをしている理由、かな?」
『は?』
「君は見たところお洒落には気を使っている様だけれど其の格好にチョーカーは似合わない。なのに何故着けているのかと思ってね。」
『お洒落なんかじゃ或りませんよ。』
「では単刀直入に聞こう。何故中也のを着けているのかい?」
あぁー、鋭いな此の人。
流石最年少幹部と持て囃されただけ有る。
一体此の質問にいくつもの含みが持たされているんだろう。
『御守り代わり、ですかね。』
「御守り…。」
『離れていても側に居る気がして。一人じゃないんだって実感出来るんです。だから御守り。』
「其れは中也のでなければ駄目なの?」
『はい。彼は私に“意味”をくれた人だから。』
「……。」
『話す“意味”、笑う“意味”、此処に居る“意味”、そして……生きる“意味”を。』
「成る程。異能力の所為で苦労して来たんだね。」
『えぇ。でも私は幸運です。家畜の様に扱われる寸前だった所を助けて貰ってマフィアに入る事になって、中也に出逢えて。』
「……其れが全て森さんの演出だとしても?」
『最終的には良くして頂いてるんです。終わり良ければ全て良しって云うじゃないですか。」
「未だ終わりじゃないよ。」
『え?』