第13章 孤島の名探偵
乱「君が今跡を継いでいるこの家は最初彼が継ぐ予定だったよね?」
男「嗚呼。父上が亡くなるひと月前に変えたんだ。勿論私は断ったが父上の云う事は絶対だったから…。」
乱「ふぅん。其れ、彼が頼んだんだよ。弟に継がせてくれ、私は他にやりたい事があるからって。彼はね、或る旅館に住み込みで働いてゆくゆくは婚約者の彼女と其処を継ぎたかったみたいだよ。」
男「そんな…真逆あの旅館のことか!?」
乱「君が思っている処で合ってるよ。それで其の事を婚約者に伝えた彼は、旅館を経営なんて有り得ない。私はあの豪邸に不自由無く住めるから婚約したのに。と罵倒されたんだ。其の日を境に暴力は度を増した。前から怒ると手が付けられなかったみたいだけど。」
男「暴力を振るわれてたなら正当防衛じゃないのか!?」
太「相手と対等の物で反撃しない限り過剰防衛に中る。婚約者が刃物を使っていないのならば刃物は使えない。」
乱「それに反撃して殺してしまったんじゃない。彼が意図的に殺した。君を護る為に。」
男「は?如何して俺を?」
乱「事件が起きたあの日、彼女は彼にこう云ったんだ。貴方と居ても何も価値は無い。今から弟さんに会いに行く。純粋な子だから貴方から暴力を受けたとでも云えば慰めて寄り添ってくれるでしょ?ってね。其処から結婚まで持っていって当初の計画通りこの豪邸を継ぐつもりだったんだよ。けど一瞬にして其れ悟った彼は自分と同じ目に合わせたくないが為に、君を護る為に彼女を意図的に殺したんだ。」
男「そ、そんな……如何してそんな事を!!如何して何も云ってくれなかったんだ!!」
乱「だから下らないんだよ。そもそも兄弟で話し合ってれば解決した話なんだから。」
『そう云う訳だったんだ………良かった。』
動揺を隠せない男は膝から崩れ落ちてしまい暫く微動だにしなかった。
愛理の足枷の鍵を探し自由の身となった頃にはパトカーのサイレンの音が鳴り響いていた。