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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第13章 孤島の名探偵




谷崎に調べて貰った犯人の住所を元に車を走らせた先に着いた場所は所謂豪邸であった。


「此の屋敷の中から彼女を探せと云うのか…?」

「中々骨が折れそうだねぇ。」

「いや、その必要は無いみたいだよ。」

「ようこそ、お待ちしておりました。今御案内します。」

「国木田。」


犯人である男が正門前に現れ案内すると背を向けた瞬間、国木田が襲い掛かろうと一歩前に踏み出した所を乱歩に止められる。
其れを知った男は後ろを振り返る事も無く、賢明なご判断です。と云い放つと玄関口へスタスタと歩き出す。
誰も何も発言しないまま暫く歩くと三階の角部屋に辿り着いた。


「今開けますので暫しお待ちを。」


男が例の鍵を開け頑丈な扉を開くと乱歩達の目に入った光景は信じられないものだった。


「彼奴……。」

「嘘でしょ?」

「何で此の状況で寝てられるの。」


片時も忘れる事無く心配していた三人の目に移ったのはベッドの上でぐっすり寝ている愛理だった。


「あぁ、先程おやつを食べていましたので。食べ終えるとすぐに寝るんです。」

「「「子供かよ。」」」

『んぅ。……あれ?もうご飯?』

「いや、違う。御迎えだ。」

『えっ!?あれ!?乱歩さん!!其れに太宰さんと国木田さんも。助けに来てくれたんですね!』

「うん、私と国木田くんの存在感が薄い上に此の光景を見ると最早私たちは何をしに来たのか疑問だよ。」


誘拐された仲間を助けに来たとは思えないやり取りを他所に乱歩だけは愛理に駆け寄りベッドの上に座る彼女を抱き締めた。


「無事で良かったっ!本当に良かったっ!」

『乱歩さんが必ず助けに来てくれるって信じてましたから。』

「否、僕は何もしてないんだ…」

『えっ?其れは如何云う…「却説、感動の再会も終わった事ですしそろそろ本題に入りましょう。」』


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