第13章 孤島の名探偵
『貴方みたいな人が犯罪を犯さないといけない理由だよ。』
「……。」
『私に傷一つ付けず、むしろ食事におやつまで与えるという好待遇。此れで殺しの線は消える。そして貴方の服装や此の部屋の家財を見るに金銭に困っている訳でも無いから身代金目当てでも無い。……とすると探偵社、いや、探偵社員への怨恨ってところかな?』
「……何故探偵社への恨みでは無いと?」
『社自体への恨みだったらこんな回りくどい事しなくても会社を吹き飛ばすなり仕事の邪魔をするなり他の方法が或るでしょ。誰かが助けに来たと同時に殺されさちゃうのね、私。』
「流石名探偵と恋仲とだけあって頭の回転が速いな。」
『あー、矢っ張り乱歩さん絡みか。事務員じゃなくわざわざ異能力持ってる私を捕まえるくらいだもんね。』
「その通りだ。彼奴にはっ、江戸川乱歩にはっ、一生の後悔とトラウマを味わってもらう!」
普段の冷静沈着な様子とは打って変わり憎しみに満ちた顔をした男はグッと拳を握ると部屋から出て行った。
其れを見届けた私は特に何をする事もなく、何時も通りおやつを頂いた。
「映像見つけましたッ!!愛理ちゃんが男性におぶさられている所が映ってます!!」
「でかしたぞ、谷崎!!」
抱えていたパソコンを机の上に置くと椅子に座り例の映像を流す。
其れを見た国木田、太宰、敦は愛理が映っていた事により安堵の表情になるが一瞬にして其れは崩れた。
「此の人、何処かで見た様な…」
「何処で見た!敦!」
「んー、私は見覚え無いね。君の記憶だけが手掛かりだよ。」
「あははッ、威圧が凄いッすね、敦君。」
谷崎は苦笑いをしながら敦の方へ目をやると其処に彼はおらず、代わりに会議室の扉が閉まる音が聞こえた。
「こんな時に何処へ行った!!」
「まぁまぁ少し待ってみようではないか。」