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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第13章 孤島の名探偵




自分が此処に居ても何も出来る事は無いと思った敦は医務室に居る乱歩の元へと向かった。
扉を叩敲しようとしたその時、鼻をすする様な音がして思わず動きを止めた。
如何やら乱歩と社長が話しているらしい。


「本当なら僕がっ、僕が一番に助けないといけないのにっ!何でこんな時に限って超推理が使えないんだっ!」

「乱歩…。」

「もしもあの子に何かあったら僕のせいだ!何も分からなかったせいで!他の誰でもない愛理を一番分かりたいのに!」

「其れは違う。愛理に万が一大事が或ったとしても其れは犯人が悪いのであって乱歩が悪いのでは無い。愛理で或れば屹度大丈夫だ。こんなに心強い仲間が居るのだからな。」

「………うん。」

「彼女が戻って来た時にそんな顔をしていたら悲しむぞ。今はゆっくり休め。」

「そう、だね……。おやすみ。」

「あぁ、お休み。」


初めて乱歩の弱音を立ち聞きという形で聞いてしまった敦は改めて彼女を取り戻す事に全力を尽くそうと決意したのであった。














「おやつだ。」

『おやつ?………あははははっ!」

「何が可笑しい。」

『ふふっ、だって人質におやつって、普通出さないでしょ!』

「要らぬなら下げるが?」

『あぁー、要ります要ります!ケェキ好きなんです!』

「ふっ、そうか。」


初めて見た男の微笑んだ顔に私は何故か安堵を覚えた。
如何してこんなに優しく笑える人が誘拐なんて…。


『私を殺さないの?』

「殺しはしない。」

『じゃあ脱走すると云ったら?』

「其れは困るが、時が来たら考えよう。」

『あははっ!何それっ!貴方誘拐犯向いてないよ!』

「嗚呼そうだろうな。」

『矢っ張り腑に落ちない。』

「何がだ?」


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