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在りし日の歌【文スト】【短編集】

第13章 孤島の名探偵




-同時刻、探偵社。


「んー、愛理ちゃんは私を捜していたのだよね?」

「正確に云うと仕事を放ったらかして入水をしに行った太宰を、だがな。」

「入水では無く高速回転死だよ。」

「凄い、嫌味が全然通じてない。むしろ高速回転死って何なんだろう。」

「目撃証言によると最初に行ったのは川、その後街中ですね。其処からパッタリと痕跡が有りません。」

「失踪とは考えにくい。矢張り誘拐されたと考えるのが筋だろうね。其の場合犯人の目的は金銭では無く探偵社もしくは探偵社社員への個人的な怨恨。」

「如何して金銭では無いと?」

「姿が見えなくなってから三日だよ。金銭目的なら既に連絡が来て良い筈。」

「成る程…。」


会議室で頭を抱えるのは太宰と国木田と敦と谷崎兄。
普段なら最重要人物ともなる江戸川乱歩の姿が見えないのは、一睡もしていない彼を見兼ねて社長が医務室で睡眠を取るように釘を刺したからだ。
自分の恋人が危険な目に遭っているかも知れないのに何も出来ない、何も分からない。
そんな自分を責めに責めて推理し続けたが矢張り何も覆ることは無く今に至る。


「乱歩さん……大丈夫ですかね。」

「社長も付いているし問題は無いだろう。常日頃頼りきっていたからな、色々思う事が有ったのかも知れん。」


会議室の中が暗く重い空気に包まれた時、扉が勢いよく開いた。


「重要なお話を聞けました!!愛理さんは路地裏に居た男性と話していたそうです!」

「でかしたぞ、賢治!」

「ふむ……。矢張り怨恨の線で間違いなさそうだね。」

「ボクは辺りの防犯カメラを調べて来ます!」

「嗚呼、何かあればすぐに連絡してくれ。」

「僕は引き続きお話を聞いてきますね!」

「嗚呼、任せたぞ。」


重要な手掛かりが得られたが其れだけでは何も解決には程遠く、残された太宰と国木田と敦に再び沈黙が訪れる。



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