第1章 貴女は僕の太陽
「先生、さん、吹き抜けの2階からも見られるようですよ。あちらならあまり混んでいなさそうです」
「あ、そうだね。あっちに行こう!」
ぱあっ、と表情を明るくしてさんが歩き出した。
と、その時だった。
バアーンっと、物が破裂する音が響き、コンクリートやガラスの破片のようなものが大量に飛んでくるのが視界の端に見えた。
「さんっ!!」
俺は咄嗟に、前を歩いていたさんの腕を掴んで引き寄せると、体全体で包み込むようにして抱きしめた。
あんなものが当たれば、華奢な彼女の身体ではひとたまりもない。
(……!!)
咄嗟の事だったとはいえ、思いがけずさんを抱きしめる格好になり、ドキンと胸が大きく跳ねた。
腕の中の身体は俺が思っていたよりもずっとずっと小さくて、まるで小鳥のように柔らかで温かかった。
俺の胸に顔をうずめるさんの小さな頭が、周囲の轟音にビクリと揺れる。
飛散物の衝撃に備えていたが、俺の身体にすら一切物がぶつかってこない。
不思議に思って振り返ると、俺とさんをかばうようにして先生が立ちはだかっていた。
先生が全ての飛散物を防いでくれたのだ。もちろん、先生は無傷だ。
「ジェノス、を頼む」
それだけ言い残して、先生はびゅん、と爆発の震源の方へ飛んだ。
その横顔を見て、俺の背筋に寒気が走る。
(先生のあれほど怒った顔は、初めて見た)