第1章 貴女は僕の太陽
先生は、さんに危害を加えるものを絶対に許さない。
先生の飛んだ方向に生体センサーを向けると、いびつな形の生体反応を認めた。おそらく、この惨事はこの怪人の仕業だろう。
「ジェノス君」
さんが顔を上げて、俺を見上げていた。
その不安げな表情、少し潤んだ大きな瞳、わずかに震えている小さな身体。
こんな状況で、こんな事を思っている場合ではないことは十分理解している。だが、こんな顔を見せられては…。
機械仕掛けのはずの俺の心臓が、ドキドキと大きく脈打つ。
いや、こらえろ俺。
俺は先生からさんの無事を任されているんだ。こんな浮ついた気持ちになっている訳にはいかないのに。
俺は努めて平静を装って話した。本当は口から心臓が飛び出てしまいそうなほど緊張していたのだが。
「さん、怪人が現れました。今先生が討伐に向かったのでもう安心ですが、多少の衝撃があるかもしれません。先ほどのように物が飛んでくる可能性があります。窮屈かもしれませんが、今しばらくこの態勢でお願いします」
「はい…ありがとう、ジェノス君」
「いえ、当然のことです」
おとなしく腕の中に収まっている小さな身体。
先生のものとも、俺のものとも全く違う。まるでガラス細工のように繊細で、脆くて…。気をつけていなければすぐにでも壊れてしまいそうだ。
だから…俺は、貴女を護れるように、もっともっと強くなりたい。
家族を殺した暴走サイボーグを倒すために強くなるという目標は、とうの昔に立てている。そしてそれを実現するべく、自分なりに努力を重ねている。
だが彼女に出会って、「強くなりたい」という思いが増したのだ。
俺は、貴女を護りたい。