第1章 貴女は僕の太陽
サイタマ先生の部屋を訪れるのが日課となった俺は、今日も図々しくも先生の部屋にお邪魔をした。
するとまだ昼時だというのに、居間にさんの姿があった。
彼女は、日中は自分の部屋で仕事をしているので、先生の部屋を訪れるのはいつも夕方頃のはずなのに。
「さんがこの時間に先生の部屋にいらっしゃるのは珍しいですね」
「うん、昨日でひとつ大きな仕事が終わったから、今日は休みにしようかと思って」
ニコニコと彼女が笑うと、まるでそこに花が咲いたかのようにぱっと明るくなる。
「お前も毎日よく来るよなー」
台所でお茶の用意をしてくれていたサイタマ先生が、盆に載せた湯呑をカタカタと運んできながら言った。
今の言葉は、もちろん俺に向けて言われた事だ。
先生がさんに向かってそんなセリフを言うことは、何が起ころうとも絶対に無い。ここしばらく、お二人のやり取りを見ていて分かった事だ。
「すみません、先生」
「おー」
「あ、ごめんね。お兄ちゃんにやらせちゃって」
「ん、おー。いいって、お前は座ってろ」
先生を気遣うさんと、いつもと変わらず抑揚のない声で応える先生。
だが、先生がさんに向ける表情は俺に向けられるものとは明らかに違っていて、こんなに穏やかな表情もできたのかといつも驚かされる。