第1章 君の相手は俺しかいない
「承太郎さん、どこ?」
コツコツと白状をついて部屋に入ってきたのは、淡いピンク色のワンピースを着た小柄な女性である。
その杖の先が、カツンと本の山にぶつかった。
「あっ」
その拍子に女性の細い体が傾き倒れそうになるが、その華奢な身体が床にぶつかる前に、ぬっと太い腕が現れてがっしりと受け止めた。
「相変わらずそそっかしいな、お前は」
「あ、ありがとう」
逞しい腕の中でニコリと笑った女性の笑顔はまるで花のようで、彼女が笑うだけでそこがパッと明るくなるようだった。
それを見下ろして、承太郎は満足げにフンと鼻を鳴らす。
深い緑色の瞳が、ゆらりと優しく揺れるが、その視線と彼女の視線が交わることはなかった。
彼女の両目は固く閉じられたままだったから。彼女は生まれつきの盲目であった。