第13章 君へと続く夢 side TIGER
夢を見る。
毎日、眠る度に。
あの2人が出て来る夢だ。
友恵と出会ってからは見ていなかったのに、またこの夢を見るようになったのは能力の減退が始まった頃から……だったかな。
以前とは違って、今ではハッキリと2人の声が聞こえる。
「お願い。」
「許して。」
「逃げないで。」
「………愛して。」
毎回毎回この繰り返しだ。
な?
意味分かんねーだろ?
大体こっちはアンタ達が誰かも知らねーってのにさ。
こんなワケの分かんねー夢をまた見るようになっちまったのは疲れてるからか?
もういいのかな?
俺……ヒーロー辞めちまっても。
もう友恵も許してくれっかな?
うん、バニーならもう大丈夫だ。
俺が隣に居なくたって、1人で立派にヒーローをやっていける。
ってか……なーんて偉そうに言ったって、本当の所はもう1分そこそこしか能力が保たない足手まといの俺なんか居ねー方がバニーの為かもしんねー。
だから、辞めようと決めた。
あんなに執着したヒーローとしての自分を、こんなにあっさりと捨てられるなんて俺もビックリだったけどさ……
ホントに負け惜しみじゃなくって、これからはバニーがヒーローとしてどんどん羽ばたいてくれればそれで充分だ……
そう思えたんだよ。
一度決心してしまえば、俺の行動は早かった。
その決心が揺らいじまうのが怖かったからかもな。
ロイズさんにもベンさんにも……斎藤さんにもちゃんと話をして、他のヒーロー達にも自分の引退を告げた。
ありがたい事に皆が別れを惜しんでくれて、俺はこんなにも仲間に恵まれていたんだって今更ながら痛感したよ。
そして最後はバニーだ。