第9章 君の手をひいて
「電話番号は?」
「………え?」
「電話番号!バーナビーの!
当然知ってんだろ?」
携帯電話を手に持った男が苛立たしげに聞いて来たけど………
私…………知らない。
知らないから、言えない。
それだけなのに、男は抵抗してると思ったのか
「ホラッ…早く言えよッ!」
なんて私を怒鳴り付ける。
もうね、何だか申し訳ない気持ちになっちゃうよ。
私、誘拐されてるのにね。
何も……何一つ持ってない私でごめんなさい……って。
その時……………
突然の大きな衝撃音と同時に、この部屋唯一のドアが弾け飛ぶ。
そしてその向こうに立っていたのは片足を上げたバーナビー。
「大丈夫ですか、さん?
遅くなって申し訳ありません。」
ゆっくりと……でも真っ直ぐに近付いてくるバーナビーを見て、男は私にナイフを突き付けた。
「来るなッ!
この女がどーなってもいいのかッ!?」
そこでバーナビーはピタリと立ち止まり………
身体を青白く発光させる。
「止めておいた方がいい。
僕は今、ハンドレットパワーを発動しました。
さんに傷一つ付けでもしたら………
貴方、ご自分がどうなるか……分かりますよね?」
「ハッ……
ヒーローがそんなコト出来っこねーだろーが!」
強がりを言いながらも、ナイフを握る男の手は小さく震えてた。
「まだ分かりませんか?
僕はヒーロースーツを着ていません。
今の僕はヒーローじゃない。
さんを救いに来た只の男だ。」
バーナビーから発せられる殺気がビリビリと伝わって、本気で怒ってるんだって分かる。
そうなるともう観念したのか、男はナイフを捨ててガックリと膝を着いた。