第9章 君の手をひいて
それからはほぼ毎日のようにバーナビーと会うようになった。
ランチだったり、ディナーだったり……お茶するだけの時も。
その度に私はバーナビーの手を握って、見えたヴィジョンを伝え続ける。
もちろん事件や事故の内容ばかりじゃなくて、これからバーナビーが食べる食事のメニューだったり、オフィスで笑うワイルドタイガーの姿だったり……
それでもバーナビーは私の話を楽しそうに聞いてくれた。
そして気が付いたらバーナビーは私の事を「さん」って名前で呼んでくれるようになってた。
そんなある日に、私が見たヴィジョンは………
石造りの立派な建物……
カウンターがあって、その後ろの壁にマークが……
シュテルン銀行……
銃声に、大勢の人質……
そして大きな時計……
時間は……今から2時間後!
「………大変ッ!」
当然私は見えたヴィジョンの全てをバーナビーに話す。
「分かりました。
ありがとう、さん!
僕、急ぎますね。」
そう言って走り去ってくバーナビーの背中を見つめながら、私は誰も傷付いたりしませんように……と祈り続けた。
その晩、自宅で見たHERO TVでは銀行強盗を未然に防いだタイガー&バーナビーの特集が流れていた。
犯人グループが銀行を襲いに来た所を待ち伏せて、タイガーとバーナビーのコンビが一網打尽にしたらしい。
ヒーローインタビューでどうして事件が起こる事が分かったのか聞かれたバーナビーは、「偶然ですよ」なんて笑いながらいつものポーズ。
でもその笑顔とウインクは私だけに向けられているような気がして………
ちょっと優越感に浸ってる自分がいたんだ。