第9章 君の手をひいて
そう、私はNEXTだ。
他人の手を握ると、その人が24時間以内に体験する内容が、その人の目が見ている状態のヴィジョンになって私の思考に入り込んで来る。
断片的だから詳細は分からない。
その人の感情にも左右されるみたいで、本来とは違う色や匂いを感じる事もある。
私の意志には関係なく、手を握れば勝手に発動してしまう厄介な能力だ。
それでも子供の頃はこの能力が面白くて、いつも友達の手を握ってた。
この子がこれから体験する事を教えてあげると喜んでもらえるのが嬉しかった。
でもその内に……周りの人達から敬遠されるようになった。
そりゃ気持ち悪いよね。
未来に起こる内容をペラペラ喋る子供なんて。
友達も皆離れていって、大人達には「気味の悪い子」と罵られた。
運良く……悪くかな?
私は孤児で、物心付いた時にはもう一人だった。
だからこの能力のせいで、家族に迷惑を掛けずに生きて来た事だけは誇りだ。
孤児院で孤立して、そうなればさっさと独り立ちすればいいだけ。
18になって直ぐ一人暮らしを始めて、もちろんブロンズステージにしかアパートは借りられなかったけれど、仕事はゴールドステージで探した。
私と同じNEXTなのにキラキラ輝いてて、皆から愛されているヒーローの側に少しでも近付きたかったから。
そのヒーローの中でも一番大好きなバーナビーが所属するアポロンメディアに近いカフェが今の職場。
職場の仲間は良い人ばかりだけど、自分の能力が発動されるのが怖くて一定の距離を取ってしまう私は大抵いつも一人だ。
自分でも分かってる。
もっと心を開いて、他人と関わるべきだって。
でも、過去に拒絶された経験が私を意固地にしていた。
それでもいつかバーナビーに会えるかも……なんて夢を見ながら過ごす毎日は楽しかった。
それなのに……
やっとバーナビーに会えたのに……
「気持ち悪い…って思われただろうなァ…」