第6章 平穏な日々に嵐はやってくる~トド松
私が言い返そうと息を吸うと、後ろからポンと肩を叩かれた。
振り向くと、トド松が口元に笑みを浮かべながら立っていた。
そのまま私を一歩後ろに下がらせ自分が前に出ると、男に向かって口を開いた。
後ろに回されてしまった私は、トド松の表情はわからない。
「そうなんだよ。ゴメンね。嘘ついてて。皆も、ごめんね? なんかぼくの所為で雰囲気悪くなっちゃったよね。ホントごめん・・・」
トド松がそう言うと、場が静まり返る。
「でも、嘘つきはぼくだけだから。ナス子姉は、嘘つきなんかじゃないし。普通に良い人だから・・・・・・ていうか、ぼくの姉さん悪く言うのやめてくれる?殺すよ」
「は、はぁ? 姉さん? お前ら姉弟なん・・・」
「ちょ、ちょっと、ナス子っ、大丈夫?!」
「へ?」
友人に声をかけられ、なんのことかわからず友人の顔を見ると、ごそごそとバックからハンカチを取り出して私に渡してくれる。
どうやら私は泣いてしまっていたらしい。
ハンカチを受け取って顔を拭くと、確かに頬が濡れている。
自分が泣いているということを自覚すると、不思議と止まらなくなるもので、ボロボロと涙が溢れ出してくる。
あ、鼻水も出てきた。
「もう帰ろう。ごめんね、ナス子、急に都合つけて来てもらったのに嫌な思いさせちゃって・・・トド松くんも、なんか、ごめん」
「ううん、ボクは気にしてないから。ボクのほうこそ」
「っていうか、酔って本人のいない所で悪口言うとか、そんな小さい男ゴメンだから。私も帰る。ナス子、いこいこ」
「え、あ、あの」
友人2人に、半ば強引に背中を押され私は店の外に出た。
ぐずぐずとまだ涙が止まらない私。うお~~止まれ~~~!!
鞄と上着を渡され、ぎゅっと手を握られる。
「ホントにごめんナス子・・・なんて言ったらいいのか・・・」
「ごめんねぇ・・・」
この2人はまったく悪くないのに、心底反省したように謝られて、私は慌てる。