第6章 平穏な日々に嵐はやってくる~トド松
トド松は、ただ黙って私と一緒に突っ立っている。
何も反応がないというのは逆に不安になるもので、私はそろりと視線を上に移し、トド松の表情を確認する。
怒るでもなく、泣くでもなく、悔しがるとかでもなく、なんていうか、感情が読めない感じ。
でも、私にはわかる。
こういう顔する時のトド松は・・・
その時、私の中の何かが弾けた。
勢いよく目の前の戸を開けると、中の皆はびっくりした様子で一斉にこちらに視線が集まる。
が、それは束の間で、みんなすぐに気まずそうに視線を下に逸らしてしまった。
そんなことはお構いなく、私は一人の男の近くまで歩み寄ると、仁王立ちしてビシっと相手を指差す。
「確かに!! あなたの言うことは正しい!! 間違ってない!一つも! ひとっつも間違ってない!!」
私が語気を強めてそう言うと、言われた相手は少し安心したように表情を緩めた。
「確かにトド松はニートで、童貞で、あざとくて、見栄っ張りで、人の心を持たないドライモンスターみたいなとこもあるけども!! だがしかし!! だぁがしかぁぁあし!!!」
個室の中はすっかり気詰まりな雰囲気が漂っているが、今の私には関係ない。
私は酔っている。酔っているんだ!!
「今だって私のこと心配してトイレまで付いて来てくれたしっ、一緒にいてくれたしっ・・・ていうか・・・っていうか・・・っ!・・・っ!」
・・・・・・・あ、アレ?!案外褒め言葉出てこないな?!
ホントに良いところないんだな六つ子共!!
私が言葉に詰まると、指差された男がチッと舌打ちをする。
うっ、こ、怖い。
「なんだよ、やっぱり知り合いかよ。おかしいと思ったんだよ、ろくに会話もしてないのにトイレに付き添って行くとかさ。嘘つきの知り合いはやっぱり嘘つきってか?」
鼻で笑いながら悪態をついてくる相手に、ぐっと体に力が入る。
悔しい・・・言い返せないこの自分の語彙力の無さが悔やまれる!!
でも何か言い返さないと気が済まない。