第6章 平穏な日々に嵐はやってくる~トド松
次々と運ばれてくる色鮮やかな美味しそうな料理をつまみながら、目立たないように、でも場の雰囲気を壊さないように会話に加わりつつ、やっぱりチラチラとトド松の事が気になってしまう。
「え~ホントにぃ? 絶対言われるでしょ、だって似てるもん、石原さとりにさぁ」
「も~トド松くん、お世辞が上手だなぁ」
「だってお世辞じゃないもん、ホントに似てるって!」
六つ子の中でも、トド松は特異だなって、こういう時は本当に思う。
女性との会話と言えば下ネタしか浮かばない長男、相手が小学生でも女子というだけで緊張するような次男、違った意味で女性を選り好みする三男、猫松、そして十四松。うん、十四まぁつ。
でもトド松は、普通に若い女の子とも出かけたりするし、会話も普通に出来るし、こうやって合コンを開けるようなパイプも持ってる。
こう考えてみると、トド松って謎だ。
「ナス子ちゃん、松野のこと見すぎじゃね? 松野のこと気になってんの~?」
「え? あ、いや、そういうんじゃないですよ~」
ヤバイ!何か言って誤魔化さなければ!いや私は別に知り合いってバレたってなんの問題もないんですけどね?トド松がね?
ス ゴ イ 顔 で こ っ ち を 見 て い る か ら ね ?
なにその顔!怖いんですけど!!初めて見たんですけど!!どういう顔の造形してんの?!
そんなに嫌ですかい?!
お姉ちゃんちょっとショックなんだけど!!!
「いやぁ、松野くん、さっきからさりげなく飲み物なくなる前に頼んでくれたり、空いたお皿片付けてもらうよう声かけてくれたり、気が利くな~って思って! なんていうか、女子力?あ、男の人に女子力っていうのは失礼かもしれないけど、とにかくそういう感じ?あはは~ごめんごめん、そんなに見てたかな~? いや見てはいないなぁ、タイプと言われればちょっと違うんだよなぁ」
「あ、そ、そうなんだ・・・」
若干早口でとりあえずトッティを持ち上げておく。そしてさり気なくそういう感情でトド松を見ていたわけではないことも伝えておく。
満足かトッティ。これでいいか。
そう、私はやれば出来る女。出来る女なのよ。