第3章 平穏な日々に嵐はやってくる~チョロ松~
車の主が私だと気づくとこちらへと近づきいつもの調子で話しかけてきた。
私の女子力の足りなさにもガッカリしている様子の顔が伺える。
その視線、もう慣れっこですけどね。わかってますけどね。
「で、どっか行くの? 私服なのに車で出かけるとか珍しいね。天気予報では雨や槍は降るとか言ってなかったけどな」
「私でも休みの日に外に出かける事くらいありますぅ。そんな事くらいで雨やら槍やら急に降られてたまるかってんだっ」
拳を高く上げて反論するもチョロ松は口をへの字にしながらあきれ顔のままだ。
「ふーん、でもそんな恰好じゃどっかに遊びに行くとかでもなさそうじゃん。買い物にでも行くの? 漫画とか・・・あ、また食料が尽きたとか?」
ギクリと私の肩が揺れた。
くぅ、なんなのこの六つ子の連中は。私の事お見通しみたいな目をして鋭い事言ってきて。
実は馬鹿に見えて馬鹿じゃないんじゃないの?!シコ松の癖に。
何か言うと面倒な事になるのでジト目で睨んで心で訴えてやった。
「お前、今僕の事心の声で卑下しただろ」
「え?なんの事かなぁ、ぴゅーぴゅー♪」
口笛を吹いて誤魔化すが、私の先ほどの視線と行動で何か悟ったらしいチョロ松の攻撃が始まる。
「ていうかまたなの? 日頃から休みの日はないものを調達しておいたり、何かしら起こった時の為に備えておかないと…何かあってからじゃ遅いんだから。そもそもお前は普段からの危機感が足りない。服だって洗濯いつも溜め込んでるし、漫画だって適当に積んであるし、面倒の一言で休みの日はもっぱらパジャマ姿だし、外に出る時ですら化粧一つしないどころか女子力皆無の変質者ルック」
「オタクルックのチョロ松に言われたくない・・・」
降らされる言葉の雨にもごもご反論しようとしたが、まんまと言い当てられているので反論しがたく視線を泳がせる。
「あ?」
「なんでもありまっせん!」
「だいたいナス子はさー」
あ、スイッチ入ってる。このままでは1時間くらい説教みたいなグチグチを聞かされると思い、慌ててチョロ松の言葉を遮った。