第3章 平穏な日々に嵐はやってくる~チョロ松~
ふははははは、どうだ!今日の私は一味違うんだぜぇ?
パジャマからグレードアップして防御力がちょっと上がった感じがする。
適当に仕舞った服をまた取り出しクソパーカー以外の服を着て暖かそうなパンツを履くと、上着と帽子、マフラー、マスク。完璧に寒くない装備が出来上がった。
うむ、ゲームで言えば魅力とかの数値はゼロだがそんなものはどうでもいいのだ。
休みの日に化粧とかも全くしないからね。女子力?なにそれ美味しいの?
今日はスーパーで買い出しをしようと決意を決めノロノロと家を出る。
「うぉ、風が強くて寒い。こんな大層な装備をつけてもまだダメなのか・・・私のHPが少し削られていくよー」
服の隙間から入る風が私の体をブルルと震わせた。
スーパーまで距離は徒歩約10分程度。
車を出して行く距離ではないがやっぱり面ど(略)私はついつい車を出した。
「すぐそこだしガソリンもそんな減る訳じゃあるまいしいいよね☆
忙しい時期に風邪引いて仕事休む訳にもいかないし~ぃ? てか買い出しなんだから荷物も多くなるから逆に車で良いよね~あるものは使わないとね~」
車を出して出発すると、道路脇に見たことのあるグリーンのチェックシャツの男性がトボトボ歩いているのが見えた。両手にいっぱいの紙袋を下げている。
「あれ? あの姿って」
少し速度を上げて追いつくと車の窓を開けて目的の男性に声をかける。
「へいへいへーい、チョロ松く~ん」
「え?! あのっ、どちら様ですか??!」
突然の声掛けにびっくりして動きが止まるチョロ松。
ささっと持っていた紙袋を後ろに隠す。
うむ、素早い。まぁ、人に見られたくはないよねぇ、そのチラリと見えるフィギュアとか、女の子の書いてある本とか漫画とかタオルとか・・・。
私の完璧な装備のせいで相手は私が誰かわかってないらしい。
もじもじしながら後ろに下がり更に荷物が見えないようにする。
そんなチョロ松を見て弄るのも面白いが、本人がもじもじしているのを見るのも自分に当てはめてみると気持ちもわかるわけで・・・
私はマスクを外しマフラーを下げると「私、私」とニッカリ笑いかけた。
「あぁ、なんだナス子姉か。また随分と完璧な防寒対策だね・・・誰かわかんなかったよ、変質者かと思」
「おい、女性に向かって失礼だぞコラ」