第1章 夢
『ともちゃん遅いな。探しに行って入れ違いになったらあれだし、、部屋にいよう。もうこんな時間か、窓も閉めなきゃ。』 私は立ち上がる。すると、窓際に黒猫がこっちを見ているのが見えた。『こんな所でどうしたの?飼い猫さんかな、首輪?みたいなの付いてるし。』 近づくと、猫は付いて来いと言わんばかりの雰囲気で歩き出す。 私は手を引かれるかのように... しばらく歩くと黒猫は姿を消してしまった。『いなくなっちゃった。てか学園にこんな所あったんだ、空気が凄く澄んでるなぁ。』 私がたどり着いたのは学園内の庭の様な場所。そこには小さいながら透き通り、神秘的な池があった。まるで自然の中にいるかのよう。『居心地いいな。』つぶやく。 すると奥から小さく歌声が聞こえてきた。 音色を辿って進んで行く。こんな時間に外で歌の練習? 次第に明確になる歌声。とても素敵な歌、でもなぜか完璧には思えない。自信の中に、どうしようもない淋しさが溢れている。 それでも私は、この歌声に引き寄せられるのだ。 声の主を見る。『あのー、もしかして、朝の...?』「...ああ、またお会いしましたね。」 今朝ぶつかってしまった衝撃でしおりを落としてしまった、例の彼だ。こんな時間にこんな所で再会するなんて。それにしても美形だなホント。同じ世界に住んでるのか疑うレベルだよ。また見とれちゃうってば...。 でも、見とれるのはただそれだけが理由じゃない気がする。知らんけど。「どうかされました...?」『あっいや!聴き惚れちゃってたので余韻に浸って...勝手に聞いてしまってごめんなさい。』「いえ、こんな所で歌っていた私が悪いので。」