第29章 学園祭の時間②
……。どうしよう。帰るに帰れない。
お兄ちゃんを叩いちゃった…。
いくらなんでも手を出したのはよくなかったな…。
内容が内容だけにE組の友達には言えない…。
かといって、本校舎に友達なんて…。
でも、お金も持ってきてないし、スマホだけじゃ中3の私にはどうすることもできない…。
帰って謝ろう………。
『まぁか?』
振り返るとそこにいたのは…。
『浅野君…。』
学秀『何をしている?』
『えっと…その……。散歩?かなぁ。』
学秀『散歩には見えなかったが?』
『うっ…。じゃあ、家出かなぁ。』
学秀『…。赤羽と喧嘩でもしたのか?』
『ぅん…。ちょっとね…。』
学秀『なら僕の家に来い。』
『いやいや、それは気持ちだけで。』
学秀『行くぞ。』
手を引かれ半ば強引に歩き出す。
『ここが浅野君の家……。』
学秀『そうだ。さ、入れ。』
『………。お邪魔します。』
使用人さんらしき人に事情を説明した浅野君が戻ってくる。
学秀『使用人に話はした。当分授業はなく、学園祭の準備だ。好きなだけウチにいればいい。あと、服を用意させる。着替えてこい。』
『…ありがと。』
私は使用人さんへ連れられ、客間用の部屋に通される。
女性用の部屋着ワンピースを渡され着替える。
何でもあるな…。さすが浅野家だ。
お兄ちゃんにメールだけは送っとくか。
スマホを取り出し、メールを送る。
【友達の家にしばらく泊まるのでご心配なく。】