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【ハイキュー】駒鳥が啼く頃、鐘は鳴る【木兎&赤葦】

第3章 秋霖 ②




「とにかく・・・旦那様は御学業と家政以外のご心配はなさらないでください」

八重を含む家の全てのことは自分に任せろ、そう言いたいのだろう。
木兎家に関わる一切を取り仕切る家令としては当然のことなのかもしれないが、赤葦だってまだ十七歳。
そこまで背負いこむ必要がどこにあるのか。

八重は侮辱されたことへの怒りよりも、ただこの赤葦という男が分からずにいた。
それを知ってか知らずか、家令は淡々と先を続ける。

「本日のご予定ですが、八重様は十時に牛島邸へお伺いすることになっています」

“牛島邸”という単語が出てきた瞬間、光太郎の表情が大きく歪む。

「げ! まさか八重をウシワカの所へ連れていくのか?!」
「はい、何か不都合でも?」
「フツゴウっていうか・・・ウシワカだぞ、あいつに用なんか無いだろ」

いったい誰の話をしているのかと八重が首を傾げていると、赤葦の目がこちらに向けられた。

「牛島侯爵夫人は、華道に精通された方。八重様が貴光様の御令嬢と聞くや、是非にと稽古を買って出てくださったのです」
「お前・・・いつの間に定子様と親しくなってたんだ・・・?」
「まぁ、いろいろと」

“ウシワカ”とは何か因縁のようなものがあるのか、光太郎は気に入らないという顔をしている。
八重は二人の会話にまるでついていけなかったが、とにかく自分が今日から稽古事三昧になるということだけは分かった。

「さぁ、旦那様も早く食事を済ませないと学院に遅れますよ。貴方の恥こそ、木兎家の恥です」
「赤葦、ひどい!」

光太郎は慌てて残りのパンを口に放り込みながら、赤葦の方をちらりと見る。

「・・・八重にあまり無理をさせるなよ」

光太郎はおそらく気にしないだろうが・・・

八重が社交の場で粗相をすれば木兎家の恥になる。
光太郎の体面を汚すことだけは、赤葦は絶対に許さない。


「・・・承知しました」


それは言葉の上でだけ。
八重に無理をさせることになろうが構わない。

光太郎の名誉を守ること、それが赤葦にとって最優先だった───









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