第4章 気持ちに蓋を....
下校時間になるから閉めるぞーと言う先生の声を背に受けながらトボトボと暗くなった道を歩いていると。
「チサト?こんな時間までどうしたんだ?」
後ろから声を掛けられビクッとなりながら振り向くと部活帰りの由くんが立っていた。
「…由くん…」
私の顔を見て一瞬、目を見開いたが直ぐにいつもの穏やかな顔になると
「なんかあった?」
優しく声を掛けられて今まで抑えてたものが溢れてくる。
水の中にいるみたいに視界がゆらゆら揺れる。
次の瞬間腕を引かれフワッと優しい香りに包まれたかと思うと細身だけど鍛えられた硬い胸板が顔に当たり由くんに抱きしめられていることに気付く。
「由くん?」
瞬きをパチパチしながら見上げると
「我慢せず泣いていいよ。チサト。オレが隠してあげるから。」
ーないてもだいじょうぶだよ。おれがかくしてあげるから。
あぁ変わらないな…昔から由くんは兄弟のいない私にとって優しいお兄ちゃんだった。
次の瞬間、決壊したように涙がポロポロ溢れてくる。
「私…黄瀬くんに彼女がいるって知ってたのに…欲張っちゃったの。ダメだって…分かって…」
由くんは途切れ途切れの私の話を聞きながら落ち着くまで頭を撫でながら抱きしめてくれていた。
「グスッ…由くんゴメンね。」
「良いんだよ。チサトこういう時は…」
「ヒック…ん…ありがとう。」
ーよし!と言って頭を撫でながら穏やかに笑った由くんは
帰るか。と小さい頃に慰めてくれた時と同じように手を繋いで帰ってくれた。