第2章 酒は飲んでも呑まれるな
「 まあちゃん……」
「ブッッ!?」
焼酎を煽っていると、突然隣からおばさんがふざけて呼んでいるあだ名で呼ばれ、危うく吹きかけた。
「えっと、一体どうしたの。加々知君」
「いえ、なんとなく呼んでみただけです」
なんとなくで呼ばないでほしい。
そして無表情だから尚更怖い。
「加々知君、笑った方がいいわよ。
愛想がないとあの狸じじ…部長にいじめられるから」
「今、狸じじいって言いましたよね」
「き、気のせいよ。
それより、昨日より仕事増えてたでしょう
部長って少しでも気に入らないとああなのよ」
「そういう上司って、割と多いですよね」
「あら、加々知君の所もそうなの?」
「だらしないという面では似ていますが、
あの部長を見るとましに思えますね」
「へぇ……」
うちの部長がましになってくれたら、
一体どれだけ楽だろうか。
出そうになるため息を飲み込んでまた焼酎を一気に煽った。
「酒、強いんですね」
「あなたもね。
そうだ、勝負でもどうかしら」
「いいですが、恐らく私の方がずっと強いですよ」
誘ってみたものの、
恐らく私の方が割と酔ってきているし
正直勝とうとしてはいなかった。
単なる娯楽。
一週間酷使され続けた私につかの間のご褒美。
「いいのよ。それで」