第3章 罠 (テオドルス/BD記念)
談話室から賑やかな声が聞こえて、覗いてみると、悪友のアーサーと、玲が楽しそうに笑い合っていた。まあ、目珍しいことじゃあない。
「じゃあ、玲。次は……ほら、ココ引っ張って?」
「こう?」
アーサーが何やら二本の紐の端を手の中に収めるように掴んで、一方を引っ張らせている。何をしているのかと眺めながら近付いた。
「そうそう、するとー……」
「え?あれっ!?何でなの!?」
「それ教えちゃ、マジックの意味ナイでしょ?」
玲は、紐が結び目もなく一本になったことにどうやら納得がいっていないらしく、怪しげに紐を調べている。
その表情があまりに必死で見ていて口元が緩んでしまいそうになった。
「駄犬には難しいようだな?」
「あ!テオ、おかえりなさい」
「おかえりー。じゃあ、テオにも一問!コレが見破れるかなー?」
挑戦的なアーサーの視線。ヤツがこういう目をした時は、勝つ自信のある勝負だけ……面倒なことでしかない。
自分の手のひらを上にして紐を挟んで玲に手のひらを重ねさせた。
「一人じゃ出来ないのマジックなの?」
「んー、コッチの方が楽しいから……かな?」
含ませた言い方したアーサーに、俺がピクリと目を細めれば、それに気を良くしたようにヤツは重なった彼女の指を絡めて繋いだ。
「っ、ちょっと!アーサー!!」
「玲、動いちゃダメだってば」
「…………」
苛立つ理由は、アーサーがやけに自信たっぷりなことが気に食わないだけじゃないと自分でもわかっている。
意地でも見破ってやろうと、繋がれた手をじっと見つめる。