第5章 子ども化
エレンを保護している古城に、ある日ハンジがやって来た。馬に乗ってフラリと現れた彼女は一人ではなく、庭掃除をしていたリヴァイは、彼女とその隣に立つ人物の姿を見て思わず目を見開いたのだった。
「やぁ、リヴァイ班の皆さん。精が出るね」
いつも通りの口調で挨拶をしたハンジであったが、その傍らには、彼女に手をつながれた小さな女の子の姿があった。 年の頃は4歳ぐらいであろうか。淡いピンク色のワンピースを着ている。肌は抜けるように白く、やや栗色がかった髪は肩まで伸びてサラサラと風に揺れている。すっと通った鼻筋に、桜色の小さな唇、コバルトブルーの大きな瞳…
「おい…、何だかすごく見覚えのある感じがするんだが…」
竹ぼうきを持ったリヴァイが、眉間にシワを寄せながらズンズンと近づいていく。
リヴァイが目の前に立った瞬間、ハンジの隣にいた女の子が大きな目でおずおずと見上げてきて、ばちっとリヴァイと目が合った。
「…まさか……か?」
「せ、せんぱい…」
女の子の発した言葉に、リヴァイは思わずポロリと竹ぼうきを落としてしまった。
そして間髪入れずに、ジロッとハンジを睨む。
「…これは一体どういうことだ?」
「うん、まぁ、見た通りなんだけど。巨人を小型化できないかと思って新薬を開発していたら、ついうっかりね」
たはっ、と全く悪びれるふうでもなくハンジが笑う。
リヴァイ達のもとに集まってきていたリヴァイ班の面々も、ハンジの様子を見て思わずめまいに襲われた。しかしそんな周囲の反応などは意に介さずにハンジは言葉を続ける。
「でも心配しないで!効果はそんなに長く続かないはずだから。本部にいても色々と面倒だから、少しの間をここに置いてあげてよ」
皆の視線が一斉に、小さくなったに注がれる。
(……――これは…天使か?)
成人しているも小柄で非常に整った容姿をしているが、子ども化したにはさらに幼さも加わり、思わず頬ずりしたくなるような可愛さであった。
「じゃ、頼んだよー!」と、リヴァイの返事も聞かずに、ハンジは馬で駆け去っていってしまったのだった。