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ただのパンダのお引っ越し

第11章 私とパンダと空のむこう



仕事を終えてアパートに帰り、重い手で集合ポストを開いた。

近くの弁当屋のチラシ、あ〜ご飯作るのめんどいから弁当買ってくればよかった。
出前ピザのチラシ、でも1人でピザ取るのもちょっとね、高いし。
不動産のチラシ、くそっ丸めて捨ててやる。
薄緑色の封筒、ん?封筒、ん…?

私は大急ぎで玄関の鍵を開け、靴を脱ぐのももどかしく、膝を床に打ちつけながら家の中に転がり込んだ。
カバンを床に放り投げる。
ハサミ、ハサミはどこだ。

ペン立てをひっくり返しながらハサミを手に取る。
隙間に片刃を差し込み、ぐいと引っ張ると、封筒はビビッと音を立ててその口を開いた。
中身を抜き出して開く。いやに陽気なパンダのイラストで飾られた便箋が数枚。
そこにはミミズがのたくったような下手くそな文字が書かれていた。

手紙の差出人は、伊豆くんだった。

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