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ただのパンダのお引っ越し

第10章 スーツ男



翌週、伊豆くんはスーツ男さんと連絡をとり、私の家を出て行った。

私が買い与えた数着の服と靴、あとパンダのエプロン。それだけが彼の荷物。余りにも少ないね。

私は彼を見送るために駅までついて行った。スーツ男さんに乗車券を渡された伊豆くんは自動改札機にぎこちなくそれを通し、向こう側へと渡る。
改札の内と外とで、少しの間見つめ合った。

伊豆くんは小さく私に手を振った。

――そんなに気にするな。ただちょっと、お引っ越しをするだけだから。よくあることだ。

彼の目はそう言っているように見えた。


『まもなく、1番線に電車が参ります…』

電車の到来を告げるアナウンスが流れ、伊豆くんとスーツ男さんは歩き出した。
そうして人混みに紛れ、やがて見えなくなった。

さようなら。伊豆くん。
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