• テキストサイズ

ただのパンダのお引っ越し

第9章 動物園でご対面



日曜の朝、私と伊豆くんはガタゴト揺れる電車に乗っていた。
ドア側に立つ伊豆くんは「すごい!速い!」と窓の外を流れる景色にはしゃいでいた。
ちなみに電車に乗る前は、切符が自動改札機に吸い込まれるのを見て「ビックリした!」とはしゃいでいた。

変な目で見られるから車内ではしゃぐんじゃない、と言い聞かせると、私の耳に口を寄せて「すごく速い」とこしょこしょしてきた。それさっきも聞いたからね。

しかし伊豆くんが余裕ではしゃいでいられるのも最初だけだった。乗り換えをして都心に近づくにつれ、車内は人、人、人で溢れかえる。

「こんなに沢山の人…みんな動物園に行くのか!?」
「シー、大声出さないの」

私は伊豆くんの手を引いて、電車の隅の壁にぴったり張り付いた。なるべく目立ちたくない。

ガコンガコンと、電車は容赦なく揺れながら私たちを運ぶ。
ひと際大きく揺れたとき、私はバランスを崩して伊豆くんの胸に倒れ込んでしまった。だってこの電車、手すりがないんだもん!

伊豆くんはにっこり笑いながら
「大丈夫か?危ないからオレに掴まってていいぞ」と言った。

まあ、偉そうに。パンダの姿の時はよく椅子から転げ落ちたり、高いところの物を取ろうとしてひっくり返ったりしているくせに。知ってるんだぞ。
/ 92ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp