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ただのパンダのお引っ越し

第4章 夢の肉球マッサージ



「死ぬ…」

家の扉を開けてすぐ、私は玄関口に倒れ込んだ。


てふてふと白と黒の毛玉が歩いてきた。私の横に座り込んだ毛玉は、不思議そうな顔をしている。

「私を癒せるのはキミだけだよ…」

おいで、と手を広げると、毛玉ことパンダの伊豆くんは大人しく身を委ねてきた。

あ〜モフい。心が洗われる。明日への活力が湧く。
ちょっと泣けてきた。

伊豆くんはまだ不思議そうに首を傾げていた。
家に帰るとすぐシャワーを浴びるはずの私が寝っ転がったまま動かないからだろう。

「聞いてよ伊豆くん。今日すっごく大変だったんだよ」

彼にだけは遠慮なく愚痴を吐ける。
私は伊豆くんの温かくも柔らかい体を両手でホールドしながらギャーギャーと会社への文句をブチまけた。伊豆くんは黙ってそれを聞いてくれた。

実際聞いていたかどうかはわからない。もしかしたらボ〜ッと晩御飯のことなんか考えていただけかもしれない。
でもそれでもよかった。いや、その方がいい。あれこれ言い返されてもウザいだけだしね。


「は〜、少しスッキリした。お風呂入ってくる。ご飯ちょっと待っててね」

そう言って立ち上がると、伊豆くんは私の脚に体をすり付けてきた。「わかった、待ってる」という意思表示だろう。
うむうむ、かわいいやつめ。

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