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【進撃の巨人】愛を込めて花束を(R18)

第8章 理解が困難なアイツと私






驚いた。

ジャンの言葉に。



それを買った時に母が呟いたものと、
父が初めて手に取った時と、

全く同じ台詞に、懐かしさすら感じて。



「でしょ?」



嬉しかった。



自分の宝物が褒められて。

自分の思い出が褒められて。



って、こんな事で喜んでいる場合ではない。

取り敢えず、今から心理戦を制さなければいけないと言う状況であるのに、何を和んでしまったんだ。

親しい間柄でもないのに。



一つ、小さく息を吐き、出来るだけニッコリとジャンを見た。



「……それで、今日は何の用ですか?」



パンを手に取りながら私は話を切り出した。

敬語をわざと使ったのは、精一杯の他人行儀である。



ジャンは「ん?」という顔をしてから、コップの中のものをグイッと飲み込んだ。



「用がねぇと、ダメか?」

「いや、ダメっていうか……わざわざ部屋に来ることなくない?」



そう言いながら、ズイ。と差し出してきたジャンのコップに、お水を注ぐ。

「サンキュ。」と笑ったジャンは、再びコップに口を付ける。

中身はただの水だと言うのに、味わうように目を閉じると、絞り出すような声を漏らした。



「……あー……、何か、これで飲むと、美味いな。」

「え……?あ、うん。」

「滑らかっつーか、何つーか。」

「やっぱり?……じゃなくて、ジャン、私の話し聞いてる?」



危うく話しを逸らされそうになり、慌てて引き戻す。

いや、確かに容れ物が違うだけで味は変わるし、食や飲み物の話しに花を咲かせるのは好きだけど、それは今じゃなくていい。



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