第7章 ワナにハマった俺のせい?
別に、いきなりとって食おうなんか思っちゃいねぇのに、目の前の美咲のこのリアクションはなんだって言うんだ。
硬く張り詰めたような美咲の緊張を、少しでもほぐしてやりたくて、サラサラの髪に手を伸ばし。
ソッと撫でた。
「……んな、怯えんなよ。取り敢えずはアレだ。飯食え。」
出来るだけ優しく笑って、美咲の口のサイズに千切ったパンを、彼女の口に押し当てると、いかにも怪訝な顔。
何に対してそこまで怯える必要が……
と、考えて。
いや、と気付く。
美咲が怯えているのは、俺に対して、だ。
溜息が出そうになるが、グッと堪える。
自分が撒いた種だから。
ただ……
ほんの少しだけでもいい。
俺と一緒にいる時間を、心地いいと感じで欲しい。
欲を言うなら、俺の半分くらいでも。
「最近は、終わりも早ぇーんだし、ゆっくり楽しまねぇと損だろ。せっかく飯も飲みモンもあるんだしよぉ。」
心臓がイヤなくらい早くなって、内心は気が気じゃない俺の一言に、美咲は小さく頷いた。
「……うん。」
ようやく反応した美咲から、硬さが削がれていくのが分かって、一気に緊張がほぐれた。
警戒されたままじゃ、距離を縮めるのも一苦労だ。
思わず、頬が緩む。
あーあ。
単純だなぁ。俺。
こんな小っせぇ事で、ヒヤヒヤしたり、ホッとしたりなんかしちまって。
ガラにもなく悪ぶったりよぉ。
……ん?
悪ぶったりすんのには、別に慣れてっか。
そんな事を思っていたら、美咲が俺をじっと見ているのに気が付いた。
目が合っても、逸らそうとしない。
……何だ?
な……に、考えてんだ?