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【進撃の巨人】愛を込めて花束を(R18)

第12章 ヒトリの夜は誰のせい?






コンコン。

誰も周りにいない事を確認し、小さくドアをノックする。



いくら待っても中からの反応はなく、眉を寄せる。



「……んだ?」



美咲がハンジさんに言われて帰ったのは、1時間半程前だから、エルヴィン団長からサインをもらうなんて用事は、とっくに終わっているはずだ。

ただ書類にサインしてもらうだけだから、すぐ部屋に戻ってんのかと思ってたっつーのに。



もう一度、ノックしてみる。が、もちろん反応はなかった。



確かに、何も伝えてねぇが。

……勝手にいいアイディアが閃いたと喜んでいただけだ。



自分の浮かれっぷりに呆れる。

せめて今日の事、伝えておくべきだった。



溜息と共に、ふと、思いつく。



「……もしかして、もう寝ちまってんのか?」



ありえるな。

最近は忙しかったし、疲労だって身体に来てるはずだ。

まぁ、それなら勝手に部屋に入って、飯食って俺も隣で寝よう。



そう思って、ドアを開いて、勝手に部屋に入る。



予想通り、部屋の灯りはない。



部屋の中まで静かに歩いていき、彼女が寝ているであろうベッドを確認する。



……しかし、美咲はそこにいなかった。



部屋の主人がいない静かな空間。

途端に胸が騒つく。

食堂にいるのかも知れないのに、決定的な何かがあったわけじゃないのに、この渦巻く嫌な予感はなんなんだ。



足音を立てぬよう努めながら彼女の部屋を出て、急ぎ足で食堂の中を確認しに行くが、もちろんそこに美咲の姿はない。



口元を手で覆って考え込む。
もうひとつ、思い当たることがある。



エルヴィン団長の部屋に、必ずしも彼“だけ”がいるわけでは、ない。



思考が纏まるよりも先に、キリキリと胸の奥が痛くなる。



美咲がいないなら、食堂には用はない。



彼女の部屋の、普段なら中の光が見える場所。

兵舎から宿舎への通路の淵に立って、彼女の部屋を見つめた。







……なぁ、美咲。



今、お前の中で俺って、どれくらいの存在なんだ?



弱気な自分が顔を出す。

こんな風に、誰かの部屋の窓を見つめた事なんて、もちろん経験した事がなかった。



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