第11章 距離が縮まるアイツとあの人
相手が誰なのか確かめるように、少しだけドアを開ける。
カチャリ。
小さな音を廊下に響かせて、覗いて見ると。
「は……い、って、ジャン?!」
「おま、バカ。静かにしろ。」
想像していなかった人物に驚いて、つい大きな声を出してしまった私の口元を、ジャンが塞ぐ。
……よりにもよって、何でこんな時間に来るのよ。
今日は遅くなるから無理だって、伝えたじゃない。
口に出しそうになるが、相手が相手なので、ぐっと飲み込み。
仕方なく招き入れたジャンは、もう片方の手に、ケチャップの掛かったオムレツが乗ったお皿を持っていた。
「……何?それ。」
「飯。どうせ食ってねぇんだろ?」
不機嫌そうにも見えるジャンは、いつものようにツカツカと部屋の中へ入り、まっすぐ机に向かった。
「ちょっと、ジャン?何なの?」
後ろを着いていく私に振り向く事なく、彼はお皿をコトリと机に乗せ、椅子を引く。
「食えよ。腹……減ってんだろ?」
「へ?」
「へ、じゃねぇよ。バカ。見ただけで分かれ。」
手招きするジャンの大きな手に、グイッと引かれ、身体のバランスを崩してしまいそうだった私を、ジャンが受け止める。
全くもって、事態を飲み込めていない私。
ぽかん。としたまま立ち尽くす私に、「……ったく」と呟いて、ジャンの繊細で大きな手が、私の頭をがしっと掴む。
「腹が減っては戦はどうだ、とか言うだろ?ちゃんと食って、ちゃんと寝ろ。」
ゆさゆさと頭を揺らしながら、言い聞かせるように。
私に目線を合わせて言ったジャンの言葉が、胸を打つ。