第11章 距離が縮まるアイツとあの人
整理を終えて、部屋にたどり着く頃にはもう、日付けが変わっていた。
もう少し早く終わると思っていたが、内容が難しく、かなり手こずってしまった。
もう、明日にしてしまおうか。とも考えたが、一緒に調査兵団に入ったみんなとの距離を埋めたくて、必死だった。
私も、エレンのように、直接人類の役に立ちたい。
ミカサのように、強くなりたい。
アルミンのように、策を出してみたい。
コニーやサシャのように、前に進みたい。
ジャンのように……。
悩んでも仕方がない事だと分かってはいても、そんな状況に焦っているのは事実。
自分のペースで構わないとハンジさんから言われていても、資料は山のようにあって。
一応ある程度は片付いたから、明日からはゆっくり出来る。
とはいえ、疲労感が軽減するわけではない。
「あー……疲れた。」
誰もいない部屋なのに、口に出てしまって。
身体中から力が抜けていくような気がした。
ブーツだけ脱いで、ぼふっとベッドに横になる。
……あ。
食堂寄るの忘れてた。
お腹空いてるけど、また部屋から出るのは、しんどいなぁ……。
私にしては珍しく、すっかり気力を奪われてしまった。
……やっぱり食堂に行くか。
それとも、ストレッチだけして寝るか。
上手くいかない自分の実力にイライラして、心がささくれているような気がして、不快だ。
そんな自分を癒す手段をあれこれ思案していると、小さく部屋のドアがノックされた音が聞こえた。
「……こんな時間に、誰よ?」
面倒に思いながら、聞こえないフリをする。
……だが、時間が時間だ。
何か急用でもあるのかも知れない。
……まさか、ハンジさん?
整理した書類が間違っていた、とか、ないよね……?
嫌な想像が頭を横切り、一瞬で打ち消す。
ないない、それはない。ちゃんと確認したもの。
そう結論付けて、むくりと起き上がり、部屋のドアに近付いた。