第1章 三角形 case1
京ちゃんはその場から動かず、首を振って遠慮の意思表示をしている。
家に入るのを遠慮する間柄じゃない筈なんだけど、これも幼馴染みから抜け出す為にやってるなら、無理強いは出来ない。
「…いいよ。ここで。…先輩達と晩飯食ってきたの?楽しかった?」
私のお迎え時間の要望に関してはスルーされたようだ。
「うん。楽しかったよ。私、女友達とか少ないから緊張はしたけどね。」
しつこく言っても、多分京ちゃんは聞いてくれないだろうから、話を合わせた。
大した意味の無さそうな会話をしている気がする。
これが本題な訳がない。
何の用事があって来たんだろうか。
行動を観察するように見ていると、鞄を漁り始めた。
すぐに出されたのは、今朝渡した弁当箱。
返すというように差し出されたそれを受け取る。
「そう。良かったね。…じゃ、また明日迎えに来るから。」
そう言うと、さっさと自宅の方へ向かっていってしまった。
機嫌が悪そうな気はしたけど、呼び止めても話す事はないから、そのまま背中を見送って家に入る。
部屋で着替えて、お風呂に入り、課題など一通りのやる事を終えて布団に寝転がった。