第1章 三角形 case1
ファミレスに長居してしまって、帰る頃には外は真っ暗になっていた。
先輩達と別れてからは一人で歩く帰り道。
答えなんか出なくても、話をする事で頭の中はすっきりとしていた。
無理矢理どちらかを選ぼうとするのは止める。
待たせているのは悪いと思うけど、焦って答える必要はない。
これから、少しずつ男の人の京ちゃんを、黒尾さんという人の事を、ちゃんと知っていこうと思った。
家に近付くと、玄関前に人影が見える。
街灯に照らされた顔は明らかによく知った顔で、壁に寄り掛かって眠っているように見えた。
「…京ちゃん?」
その人の前に立って控え目に声を掛ける。
返答はなく、聞こえてくるのは寝息だけだった。
「起きて、風邪引くよー。」
少しだけ背伸びして頬を軽く叩く。
「…ん。さくら、おはよう。」
やっと目を開けた京ちゃんは、まだ眠そうな顔で私を見下ろした。
「今日、やっぱ朝早すぎたんじゃないの?逃げないからさ、明日からは普通に迎えに来てね。」
からかうように笑いながら、玄関の鍵を開ける。
ここにいた、という事は私に用事があったんだろうと扉を開けて手のひらで中を示し室内に促した。