第1章 三角形 case1
ファミレスに着くと各自の注文を済ませ、目の前に並んで座る先輩達に昨日の出来事を話す。
二人共、大して驚きはせずに聞いてくれていた。
いや、白福先輩の方は食べ物に夢中だから、実質聞いてくれているのは雀田先輩だけだ。
「…驚いたりしないんですね。私みたいなのが、二人から同時に告白されたとか、奇跡に等しいレベルの事なのに。」
少なくとも私自身はそう思っているし、驚きもある。
今でもまだ、二人が私をからかっているんじゃないか、って疑っている部分もあった。
「マイナス思考禁止、ね。二人に悪いでしょ。」
雀田先輩が指先で私の額を軽く突っつく。
「んー。私達は気付いてたからねー。赤葦の方はわりと早く。小熊ちゃんが入部して、すぐくらいからーだっけ?」
額を押さえて返答を考えていると、粗方の料理を食べ終えた白福先輩が喋りだした。
「まぁね。赤葦、小熊ちゃんの事ばっか見てたし、どう見てもただの幼馴染みに対する態度じゃなかったからね。」
「そうそう。あ、でも黒尾も分かりやすかったよねー。小熊ちゃんの姿が見えなくなって焦ってんの。」
「あー、アレは驚いたわ。いくら休憩中でもコーチとかの前でスマホ弄りとか、よっぽど周り見えなくなってたんじゃない?」
二人の間で会話が進んでしまい、どこで口を挟んで良いのか分からない。
相談どころの状態じゃなくなってしまって、やり取りをただ眺めていた。