第1章 三角形 case1
少しでも落ち着こうと、深呼吸してから携帯を耳に当てたけど。
「は、はい。小熊です。」
声が裏返って、慌てているのが丸出しになっていた。
『おー。朝から悪いな。朝練あったから、メール返さなかったし電話のが早いと思って。…っつっても、教室戻るまでの数分しか話せねぇけど。』
やっぱり、忙しかったんだ。
慌ててメールしないで良かった、と少し安堵した。
「大丈夫ですよ。うち、予鈴もまだ鳴ってないので問題ありません。
えっと、昨日もお電話頂いてましたけど、何か御用ですか?」
まだ少し緊張してしまっているから、ちゃんと喋れている気がしない。
『…小熊の声、聞きたかった。また泣いてんじゃねーかって。赤葦とも話、したんだろ?』
本当に、この人は、人の事をよく見てるし、分かってる。
京ちゃんと2人で居た時に何か話したのかも知れないけど、その勘の良さに感心さえする。
それで、心配してわざわざ連絡をくれる気遣いが、少しだけ嬉しかった。