第1章 三角形 case1
出来る限り目の前の人を意識しないようにしながら、淡々と食べ物を口に運ぶ作業をしている。
「さくら、菜の花は季節終わってる筈だよね。」
突然の言葉は食卓に並んだ一品に対するもの。
表情に対する突っ込みや、昨日から度々言われている男として意識しろ発言ではなくて安心した。
「京ちゃんは辛し和え、好きでしょ。今度、差し入れにしようと思って茹でたの冷凍してあったから。」
「差し入れにコレはないと思うよ。いくら俺が好きって言っても部活中に摘まむものじゃないよね。」
「…確かに。やっぱり定番はレモンのハチミツ漬けかなー。」
雰囲気が和んで、普通に会話が出来た気がする。
ちゃんとご飯の味を感じる事が出来るようになった。
そうなると、誰かと食事をするなんて珍しい私にとって、この時間は大切で。
食べながら話すなんて行儀は悪いけど、雑談をしながら食事を進めた。