第1章 三角形 case1
調理が終わってテーブルの上に用意を済ませ、そろそろ京ちゃんを起こそうと部屋に戻る。
京ちゃんは、人のベッドだというのに、完全に熟睡していた。
「京ちゃん、起きて。朝ごはん食べよう。」
肩に手を当て体を揺らす。
触れている体は、思ったより大きかった。
女の子の成長期の方が早いとよく言うけど、小学生の頃なんか背丈も大して変わらなかったのに。
いつの間にか手を伸ばしてやっと頭に触れられるくらいの身長差になって、筋肉もついて肩幅が広くなって、喉仏も出てきて男の子から男の人になっている。
もっと早くから、意識しなくちゃならなかった。
京ちゃんは幼馴染みのお兄ちゃんみたいな男の子、じゃなくて、幼馴染みで私を何より大事にしてくれている男の人なんだ。
そんな考えが頭を過って、起こそうと体を揺らしていた手が止まった。
「…おはよう。」
相変わらず、考え事の世界に入ると抜け出せない私を現実に返したのは本日二回目の朝の挨拶。
「おはよ。ブレザー、そっちに掛けてあるから。朝ごはん出来てるから食べよう。リビングに行ってるね。」
色々と考えていた事を悟られないように、なるべく普段通りの対応をして先に部屋から出ていった。