第1章 三角形 case1
リビングに入るとまず見えたのは、テーブル上のお金。
昨日より増えているのは確かだけど、書き置きなんかはない。
金で愛情が買えるなら、私は迷わず親の愛を買いたいものだ。
無理なものは無理なんだけど。
諦め半分に息を吐いて、ソファーに座ると昨日は確認しなかったメールを開いていく。
【家着いた。今日はアリガト。後で電話する】
【取り込み中?赤葦といんの?】
【明日また連絡する】
黒尾さんから3件。
お風呂に入っていた間、電話に出なかったから勘違いをされたようだ。
【さっきの話、本気だから】
【目は擦らない事。ちゃんと冷やして】
【話したけど明日迎えに行くから】
【お休み】
【今から家出るよ。前で待ってる】
京ちゃんからは5件。
最後のメールの時間、4時なんだけど。
どんだけ早くから待ち伏せしてたのよ。
京ちゃんはうちにいるし、黒尾さんにだけメールを返す事にした。
【昨日は電話に出られなくてすみませんでした。部活もあって疲れていたので寝てしまってました】
時間も早いから返信は期待せず、携帯をテーブルに置く。
早く起きすぎてやる事もないから、久々にちゃんとした朝食でも作ろうか。
あの時間に家を出てるんじゃ、京ちゃんもご飯食べていないだろうし、お弁当も二人分作った方が良さそうだ。
キッチンに入って、冷蔵庫の中にあった物で朝食とお弁当を作り始めた。